シスター・レイでつかむ川柳と連句 西脇祥貴

 だれも聞いてくれないので言ったことないんですけど、ぼくにとってのロックンロールとは、「ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの大名曲 ”シスター・レイ” ※ が流れる17分間に聞こえるあらゆる音、見えるあらゆるもの、起こるあらゆるできごと」です。
 均一なギターリフとバッキング。それを縫うように、ちぎるように飾っていくオルガン。そして声、ルー・リードの声。暴力まみれのことばを笑いながら挿し込むことで、音楽を煽り、17分間、どんどん熱が上がっていく。
 そんなミラクルが耳から頭へ突き抜けるとき、五感にうつるあらゆるものごとはメッセージで、それらメッセージをすべて同時に吸収する快感/混乱こそ、ロックンロールだとぼくは思うのです。

 そしてぼくにとっての川柳とは、このロックンロールの17分間を、一行に凝縮したものだと言えます。
 ……ただ、凝縮の圧力があまりに高いため、ロックンロール、とそのまま言うのは、なんだかちがう気もする。うーん、短さで捉え直して、パンクロックかなあ。というので、先日、そんなようなツイートをしました。
 とある一句(書いても読んでも泣くので引用は控えます)にぎゅううううーーーっ、と抱き締められた五年前のあの日、すげえ、なんだこれ、すごすぎる、やりたい、おれもこれやりたい!!! になって、以来どうにか続けています。やりたい、に達したという点でも、パンクロックとするのが妥当な気もしますね。

 で、連句です。
 じつは連句こそ、ロックンロールと呼ぶべき文芸なんじゃないか、と感じています。

 ”シスター・レイ” を思い返すと、その要素、かなり連句に当てはまると思うんです。
 たとえば、均一なギターリフとバッキング→5・7・5・7……の継続するリズム(その他の特殊な形式であっても、ある連続するリズムを全体でキープしますよね)、あるいは式目。
 オルガン→先行きを見通しつつ連衆を導く捌き。
 声→導かれてひねりだされるそれぞれの句が見せる、情景……。

 決して打ち越されることのない情景と情景が、都度響き合って大きなうねりをつくる様子は、どんどん熱を帯びていく ”シスター・レイ” のグルーヴに相当します。みじかいことばをつないでグルーヴするのって、そういえば原初ロックンロール(リトル・リチャード御大とか!)以来の伝統でもある。
 しかも連句、ことばだから、読み返すだけでグルーヴを追体験できる。
 もっと言うなら連句、参加すれば、グルーヴの只中に溺れることができる……句が出なくて苦しいこともある、けど……!

 そんな、電気も楽器も要らないロックンロールとしての連句。
 パンクロックとして川柳をやっている以上、いずれもっと掘り下げていくことになるんだろうな、という予感に満ちた存在です。
 まだ二~三回しか参加したことなく、かつどちらもネット上でだったんですけど、いずれリアルな場で時間と熱を共有しながら巻いてみたいものです……でもほんっとスッ、と付けられないんだよな……切り替えてがんばろ……。

※ ↓未聴の方はぜひ。ただなにせ17分あるので、お時間お気持ちよいときに各自お聞きください
【YouTube】Velvet Underground – Sister Ray

西脇祥貴(にしわき・よしたか)
現代川柳五年目。中村冨二さんに抱き締められて川柳を始める。
川柳スパイラル・川柳句会ビー面・海馬川柳句会・さみしい夜の句会所属。
城崎ララとの現代川柳ユニット「川柳諸島がらぱごす」の曼荼羅の方。
X : @nyankichi4ever