高松霞と門野優の往復書簡

vol.14 2024.05.05 門野優

丁寧な暮らしが苦手だ。
毎日お風呂に入るのは面倒だし植物の水やりを忘れ続けるし再配達を繰り返す。
でも、さや付きのえんどう豆をお裾分けしてもらった日にはわざわざ豆ご飯を炊いてみるし、運良く元気に育った植物を植え替えるために素敵な植木鉢を探しに街に出かけるのは楽しい。
丁寧な暮らしを楽しんでいる自分も居る。

最近、脳科学者のジル・ボルト・テイラー博士の本を読んでいた。
博士によると、一般に言われている「右脳は感情、左脳は思考」という単純な右脳/左脳の考え方は十分ではなく、左右の脳それぞれに感情と思考を司る細胞群があり、脳には考え方や感じ方の異なる4つの個性的な〈人格(キャラ)〉、もしくはアイデンティティーのようなものがあるのだそうだ。
丁寧な暮らしが苦手なはずなのに時に楽しんでいる自分が居たり、自分の中に相反する部分があると感じることは沢山あって、それを楽しいと思うこともあれば混乱することもある。
博士の著書を読んでいると、そんな自分は脳科学的には正常だったんだ…!とわかって少し安心した。そして、ただ単に2種類の意見が対立している(丁寧な暮らしが苦手/好き)のではなく、脳の中ではもっと複雑に(博士が言うには4種類のキャラによって)様々な意見が日々飛び交っている。

そんな様々な意見が自分の中で常に飛び交っているって状態って、混乱もするけど、そんな自分をちゃんと認めてあげて耳を澄ませてあげることが出来れば、もっと連句が上達するんじゃないだろうか!と思ったんですけど、どうでしょう?
YesかNoのどちらかよりも、丁寧な暮らしが苦手だったり好きだったりした方が、そんなすべての感情がくるくると翻りながら光に照らされた方が、いろんな連句をいろんな人と巻けるような気がするんです。