【稲門連句会】　歌仙「百変百化」の巻

歌仙「百変百化」の巻

　　　捌　伊藤哲子

　　　東帝や百変百化翁遺す　　　　　　　　

　　　伊藤哲子

　　　　堅き決意の尖るクレソン　　　　　　

　　　　高橋賢

　　　登り窯太古の森の息吹くらん　　　　　

　　　加藤亀女

　　　　珈琲カップに陶のスプーン　　　　　

　　　　渡辺柚

　　　満月にダブルベースを眠らせて　　

　　　木之下みなみ

　　　　犬の散歩に軒の干し柿　　　　　　

　　　　森川純子

ウ　　まほろばの秋の大和の自撮り棒　　　　　　

　　　亀女

　　　　風呂敷包み届く交番　　　　　　　　　　

　　　　賢

　　　嘘真境界線のない漢　　　　　　　　　　　　

　　　柚

　　　　愛人と言い恋人と言い　　　　　　　　

　　　　純子

　　　空とぼけ教育論を闘わせ　　　　　　　　　

　　　哲子

　　　　電池の切れた歌うロボット　　　　　　　

　　　　賢

　　　難民の開襟シャツのふとまぶし　　　　　

　　　みなみ

　　　　砂に泪を海亀の月　　　　　　　　　　

　　　　亀女

　　　ダヴィンチの鏡文字にも誤字のあり　　　　　

　　　賢

　　　　菓子の館へ迷い迷いて　　　　　　　　

　　　　純子

　　　風と追う花の匂いのひともとへ　　　　　　　

　　　柚

　　　　蚕飼の棚に赤いバンダナ　　　　　　

　　　　みなみ

ナオ　島繋ぐサイクルロード暮遅し　　　　　　　　

　　　柚

　　　　河野水軍吾が太祖なる　　　　　　　　

　　　　哲子

　　　ののさまを拝む小さな手の小銭　　　　　　

　　　純子

　　　　鬼が築いた荒き石積　　　　　　　　　　

　　　　柚

　　　近未来世界の地図をどう変える　　　　　　　

　　　賢

　　　　猫の句会に通う雪橇　　　　　　　　　

　　　　亀女

　　　あやとりの指がからんで止まる声　　　　　　

　　　賢

　　　　筒井筒より晴れて祝言　　　　　　　　

　　　　哲子

　　　大樽に醤油の酵母熟成す　　　　　　　　

　　　みなみ

　　　　ローカル駅をロケの舞台に　　　　　　　

　　　　賢

　　　山車蔵を月に開きて男衆　　　　　　　　　

　　　純子

　　　　円空佛の面にとんぼう　　　　　　　　　

　　　　柚

ナウ　碧い瞳も利酒会に参加して　　　　　　　　　

　　　賢

　　　　ラジオ体操今日のルーティーン　　　　

　　　　純子

　　　文豪の産湯と聞いて汲みに行き　　　　　

　　　みなみ

　　　　霞の中に忽と碑　　　　　　　　　　　　

　　　　柚

　　　花老樹富士山共に寿がん　　　　　　　　　

　　　哲子

　　　　乗込鯛に撓う太い竿　　　　　　　　　

　　　　亀女