【大阪連句懇話会】歌仙「蕗の葉や」の巻

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歌仙「蕗の葉や」の巻    両吟

   蕗の葉やコロボックルの声かすか

   小池正博

    くすくす笑い交す初夏   

    宮川尚子

   里程標岬めぐりのはじまりに    

   正博

    新聞店は三叉路の角      

    尚子

   月明に猫か犬かがわからない    

   正博

    夜食づくりは兄の分担     

    尚子

ウ  濁酒こっそり詩など書き散らす   

   正博

    アドレスくらいべつにいいけど 

    尚子

   逢いたさは胸の隙間の波の音    

   正博

    紺の前掛けきっちりとしめ   

    尚子

   ゆるキャラの偽物が出る世の中に  

   正博

    欠伸しながらアンチテーゼを  

    尚子

   鯛焼きは会議室から逃げ出して   

   正博

    浄土の月がかかる御十夜    

    尚子

   少年が柱時計に眠り込み      

   正博

    音楽隊に異動申請       

    尚子

   西山へ東山へと花疲れ       

   正博

    指に残った蝶の鱗粉      

    尚子

ナオ ソックスの白あざやかに夏近し   

   尚子

    君の進路は君が決めなよ    

    正博

   母方の祖父は職人町に住む     

   尚子

    飴になるまで砂糖煮続け    

    正博

   そのむかし噴水だった池の像    

   尚子

    噂のペアが風鈴を買う     

    正博

   抱擁は体温奪いつくすまで     

   尚子

    平家亡霊真後ろに立つ     

    正博

   改版を重ねつづける広辞苑     

   尚子

    知らない街を歩く週末     

    正博

   掌でなでてまあるくなった月    

   尚子

    芒刈萱病床に揺れ       

    正博

ナウ カフェオレはミルク多めにそぞろ寒 

   尚子

    グラビア誌には友人の記事   

    正博

   紫のうさぎの切手つけたして    

   尚子

       どこかの岸に届く木片     

    正博

   チゴイネルワイゼンとめどなく花  

   尚子

    ジ・エンドとは始まりの春   

    正博

 二〇一四年五月二十九日 起首

      六月二十二日 満尾

             文韻