【草門会】 胡蝶「百歳の蛇」の巻
胡蝶「百歳の蛇」の巻
捌 進藤土竜
木枯や空家ばかりの町幾つ
進藤 土竜
たわわに実る椪柑の庭
金子 朱蝶
バタ付きの食パンの耳うれしくて
小池 舞
三段跳びで登る石段
村松 定史
寝待月ちよつと拗ねてる猫を抱き
山地春眠子
笊で釜揚げ枝豆の湯気
定史
菊人形ぐるりと首が振り向いて
定史
軽トラックに載せるママチャリ
舞
連れつ子がゐてもいいよと惚れ込まれ
春眠子
赤いパジャマでゴミの分別
朱蝶
高圧線じわり撓ませ大南風
春眠子
百歳の蛇御堂に棲まふ
定史
ぱんぱんに財布肥らす診察券
朱蝶
巴里にしあればスマホ決済
舞
おかみさんがつけませうかといつてます
舞
座ぶとん重ね何をする気ぞ
朱蝶
凍月を呼びぬ眇の雪女
春眠子
牛鍋つつく箸とフォークと
定史
上梓には熨斗袋より四斗樽
定史
生前葬に誰を招かう
朱蝶
ぎこぎことゴーシュのセロは今晩も
定史
蟻も蜥蜴も穴を出て聴く
春眠子
花吹雪古に生れ久遠へと
土竜
拾ふ神には捧ぐ草餅
舞
平成三十年十一月十七日 首尾
於 赤羽会館
註(ナカ11)眇の雪女…我々の大先輩である眞鍋呉夫(天魚)の「雪女ちよつと眇であつたといふ」を偲んで付けた。