【徳島県連句協会】 花音「ミュシャのポスター」の巻
花音「ミュシャのポスター」の巻
春めくやミュシャのポスター身を反らす
東條 士郎
爪に塗る色えらぶ淡月
曽根 燦
洋館へ沈丁の香に誘はれ
(花)関 真由子
双子の並ぶ乳母車ゆく
西條 裕子
歓声と悲鳴を乗せてコースター
(音)燦
崩れながらも光る噴水
士郎
河骨に会ひたくて池巡りたる
(花)裕子
七層塔の少し傾き
真由子
官能をこめて二の腕ヴィオラの音
(音)士郎
刺繍のごとく愛を凝縮
燦
暹羅猫は野良となれども矜恃あり
真由子
瓦礫を分けて草の生ひ立つ
裕子
運命の扉はふいに開かれて
燦
苦しかれども笑みを忘れぬ
士郎
卓球のラリー激しき正念場
(音)裕子
シャンパン掲げ祝賀パーティー
真由子
月明り地は一面の艶を帯び
士郎
旅愁なぐさむ深山竜胆
(花)燦
村芝居助六役に傍惚れし
真由子
袂に甘き媚薬忍ばせ
裕子
指切りの数ほど罪を重ねたる
燦
猩猩木はただ恥づるのみ
(花)士郎
御神渡待てど暮らせど現れず
裕子
ハイウェー飛ばすナナハンの列
(音)真由子
世の人と花の遅速を語らはむ
(花)裕子
なべて美し穀雨降る朝
執筆
(注)「花音」は花音グループの創案した形式。6句×4連+コーダ2句。
コーダの正花の他に、四季の花及び音を各連に配置する。
令和五年二月二十六日 首
三月十三日 尾
於 文学書道館&文音