【桃雅会】 歌仙「野の果までも」の巻

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歌仙「野の果までも」の巻

   捌 高橋すなを

曼殊沙華野の果までも燃えゆけり  

中森美保子

 川面に揺るる十六夜の月    

 高橋すなを

古文書を秋の庵にひもときて    

寺田 重雄

 牛乳パックたたむ習慣     

 宮川 尚子

雲梯をひとつとばしで子ら遊ぶ   

杉山 壽子

 土を持ちあげ霜柱立つ     

 中西 靜子

酉の市大賑はひの商店街          

 角帯締めて若旦那行く         

 保

君とならどんな苦労もいとはない      

 頬赤らめて黒髪を梳く         

 雄

楽しくてころころ笑つたあの頃は      

 唐橋の知る壬申の乱          

 尚

予備校の講師熱弁月涼し      

島田 裕子

 冷し西瓜をうまさうに喰ふ   

 長谷川芳子

だんご虫厨の隅に転がつて         

 窓をあければ心地良き風        

 靜

咲き競ふ花は生き甲斐水をやる       

 孫にせがまれ潮干狩へと        

 裕

鐘の音のかぎろふニース大聖堂       

 ぱつとひらけた丘の見晴らし      

 保

重広げ酒酌み交はす村の衆         

 どうせこの世はそんなところさ     

 尚

哀しみを隠すプールの海豚たち       

 医者の不足は離島悩ます        

 を

飛行機のタラップ降りる手を借りて     

 父の期待に逆らつて恋         

 保

先んじて夫婦別姓事実婚          

 ラインすれすれ決まるスパイク     

 を

望の月座敷わらしがたつてゐる       

 鉄塔の下刈田道あり          

 雄

美術展新人賞の画学生           

 レコード盤の良さに気づいて      

 雄

ありがたう故郷の山に合掌す        

 科研費の取れ喜びの春         

 裕

天へ吹く花の行方のきりもなし       

 鷽の鳴きごゑ口笛のやう        

 尚

  令和六年五月二十二日 首

  令和六年七月二十二日 尾
  於 イーブル名古屋 及び 文音