【連句ゆるり】 胡蝶(天魚式)「理解ある彼くん」の巻
何度目だろうか。私(高松)が2012年から行なっているワークショップ「連句ゆるり」の最新巻である。
今回は覚えたての形式「胡蝶」(天魚式)にした。俳人であり草門会のメンバーだった真鍋天魚が考案した形式である。句を6(表)6(裏)6(名残の表)6(名残の裏)に分け、それぞれの一連に月、恋、草花、花を入れる。花ではなく「草花」。つまり他季の花というのがポイントで、天魚は「いつも花=桜ではつまらないから」と言っていたそうだ。
天魚式ではない「胡蝶」は空花式という。林空花が考案した形式で、こちらは「十七季」にも記載がある。
○連句ゆるり
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胡蝶(天魚式)「理解ある彼くん」の巻
流星やグランドピアノめく泉
直
夜のとばりに桃を吸い込む
聡
帰りたい芒原見つからないで
あいだ
ひきとめる腕ニセモノの袖
崇譜
向日葵を知ることのない望の月
本郷
蟻地獄から出てきたばかり
あいだ
甚平の鼻歌でショソン・オ・ポンム
聡
膝を抱えて塗れるペディキュア
直
本棚に同じ本ある者同士
直
嘘をつくとき眉ふれるクセ
本郷
泣けば泣くほどに繁るる枇杷の花
崇譜
とうとう時を溶かしてしまう
聡
猛獣のいない動物園の空
あいだ
ながめるだけで激辛の汗
崇譜
予感までほのかにのぼるシャンパーニュ
聡
紙吹雪降り止まない真昼
あいだ
理解ある彼くんを札束で打ち
本郷
無月の海で待たせるつもり
あいだ
ベルリンの壁を集める砂袋
直
咳き込んでいるあれが神様
あいだ
焼き付ける離人感覚までの香を
聡
カラの箙で春を運んで
本郷
初花の手を振り合って舟と船
遠
山が笑って透明な明日
本郷
二〇二四年八月三日 首尾
於 透明書店