【奈良県連句協会】 歌仙「蝉丸の」の巻

クリックで拡大▲

歌仙「蝉丸の」の巻

   捌 谷澤 節

   蝉丸の破れ祠や草虱      

   谷澤  節

    路面電車は荻の風連れ   

    三原 寿典

   天窓の月逆さまに大きくて   

   増田  敏

    幸あれかしとコイン投げたる

    竹山みどり

   炊きたての米の香りに笑みこぼれ

   蒲生 智子

    汗もしとどに渡るつり橋  

    松本奈里子 

 ウ こわごわとこちら窺う鹿の子は 

   山本 天球

    あの娘と同じ濡れた瞳で  

    平良 孝子

   奈落へと共に呑まれる夢をみた 

   もりともこ

    チャラ男たむろす曽根崎署前    

    節

   メンソールタバコの匂い懐かしく    

   寿

    入国検査犬も活躍         

    敏

   凍港の果てに眇たる月ともり      

   里

    お神渡りする音が聞こえる     

    天

   伽話見てはいけない事だらけ      

   孝

    ギリシャ土産にメデューサの面   

    節

   能舞台こけら落としに花吹雪      

   と

    自己肯定は春の名残りか      

    み

ナオ 青空に生れては消える石鹸玉      

   寿

    ひこうき雲は西へ西へと      

    里

   「泣かないで誉めてください」遺書語る 

   と

    太平洋にうねる黒潮        

    敏

   箱庭に置いた人形つまみ出し      

   天

    サマードレスはお揃いの柄     

    孝

   先生に秘めたる思い見透かされ     

   寿

    駅舎の陰で帰り待ちます      

    敏

   気の利いた科白いくつか暗記して    

   里

    口八丁に騙されぬ祖母       

    と

   泣き言を漏らす相手は今日の月     

   天

    新酒の瓶がもはや空っぽ      

    寿

ナウ 小肥りの常世の虫が這いまわる     

   敏

    髭たくわえるソプラニストは    

    節

   シェイバーの刃を鋭角に鈍角に     

   里 

    入れ篭の器作る千代紙       

    と

   蔀戸を開けば花の嵐山         

   寿

    若鮎跳ねる清らかな水      

    執筆

  令和元年八月二十八日 起首

  令和元年十一月十二日 満尾

  於 難波市民学習センター・文音