【奈良県連句協会】 歌仙「蝉丸の」の巻
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歌仙「蝉丸の」の巻
捌 谷澤 節
蝉丸の破れ祠や草虱
谷澤 節
路面電車は荻の風連れ
三原 寿典
天窓の月逆さまに大きくて
増田 敏
幸あれかしとコイン投げたる
竹山みどり
炊きたての米の香りに笑みこぼれ
蒲生 智子
汗もしとどに渡るつり橋
松本奈里子
ウ こわごわとこちら窺う鹿の子は
山本 天球
あの娘と同じ濡れた瞳で
平良 孝子
奈落へと共に呑まれる夢をみた
もりともこ
チャラ男たむろす曽根崎署前
節
メンソールタバコの匂い懐かしく
寿
入国検査犬も活躍
敏
凍港の果てに眇たる月ともり
里
お神渡りする音が聞こえる
天
伽話見てはいけない事だらけ
孝
ギリシャ土産にメデューサの面
節
能舞台こけら落としに花吹雪
と
自己肯定は春の名残りか
み
ナオ 青空に生れては消える石鹸玉
寿
ひこうき雲は西へ西へと
里
「泣かないで誉めてください」遺書語る
と
太平洋にうねる黒潮
敏
箱庭に置いた人形つまみ出し
天
サマードレスはお揃いの柄
孝
先生に秘めたる思い見透かされ
寿
駅舎の陰で帰り待ちます
敏
気の利いた科白いくつか暗記して
里
口八丁に騙されぬ祖母
と
泣き言を漏らす相手は今日の月
天
新酒の瓶がもはや空っぽ
寿
ナウ 小肥りの常世の虫が這いまわる
敏
髭たくわえるソプラニストは
節
シェイバーの刃を鋭角に鈍角に
里
入れ篭の器作る千代紙
と
蔀戸を開けば花の嵐山
寿
若鮎跳ねる清らかな水
執筆
令和元年八月二十八日 起首
令和元年十一月十二日 満尾
於 難波市民学習センター・文音