【海市の会】 糸蜻蛉「遠き春」の巻

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糸蜻蛉「遠き春」の巻

   遠き春ピースを凌ぐコロナあり 

   三木英治

    もののなべてが歪む陽炎   

    鈴木漠

   蜃気楼見る人も無き渚にて   

   永田圭介

ウ   選挙戦術吠ゆるリーダー  

    梅村光明

   恋敵あちこちに居て歯がたたぬ 

   赤坂恒子

    拗ねて恨んでなほも愛しき 

    東條士郎

ナカ 麦藁帽にせめて黒いリボン付け    

   漠 自由律

    噛む青林檎に問ふ実存     

    英治 自由律

   夢を印刷する機械を想像      

   光明 自由律

    終った未来はもう冷ややか   

    圭介 自由律

   月の光揺れグラスにはリキュール  

   士郎 自由律

    秋の彼岸会に縁者集ひ     

    恒子 自由律

ナオ 漂泊の異端好みし友いづこ     

   英治

    木枯らし吹いてまた去りゆきし  

    漠

   古民家に炉の火絶やさずもてなして 

   圭介

ナウ  帰郷延びると出稼ぎの父    

    光明

   誕生を祝うて植ゑた花の雅趣    

   恒子

    土の匂へる惑星もがな     

    士郎

 二〇二〇年七月 満尾

※発句   ピースもコロナも高級たばこの銘柄
※糸蜻蛉 林空花創案「胡蝶」のヴァリエーション。小型の蜻蛉の形態(4枚と胴体)に模した形式。ナカ6句は自由律。長句17音節、短句14音節で構成。