【宮城県連句協会】 非懐紙「前略と」の巻
非懐紙「前略と」の巻
前略と書く春月のほどの良き
狩野康子
人肌求めもぐる猫の子
靜寿美子
密封の匣から甘い匂ひして
鵜飼桜千子
からくり時計なぜか嬉しげ
康子
うつつより逃げて沖までかけつこに
寿美子
一球入魂うなる右腕
桜千子
借景は赤富士と決め寺構へ
康子
すれ違ふ人淡き香水
寿美子
君狙う奴をまとめて雲に乗せ
桜千子
番ふ雀の鳴き交はす朝
康子
つちのこの目撃談に盛り上がり
寿美子
マーケティングの戦略を練る
桜千子
ミサイルで民の心は買へません
康子
暖炉の前で眠る老兵
寿美子
源流は黙したままのエリダノス
桜千子
亀トにすがる今日の行ひ
康子
百年の生家はつひに壊されて
寿美子
穭田を越えジブリパークへ
桜千子
ようそろと花灯籠の小人達
康子
平和の像の肩にとんばう
寿美子
令和四年三月七日 首
令和四年三月二十六日 尾
於 文音