【桃雅会】 歌仙「春隣」の巻

歌仙「春隣」の巻

　　　捌　古賀　幹子

ひとり居の麵麭焼ける香や春隣　　　

古賀　幹子

　三寒四温日溜りの猫　　　　　　

　中森美保子

ラジオから懐かしき曲流れ来て　　　

寺田　重雄

　軽く挨拶ジョギングの人　　　　

　島田　裕子

稜線を銀にかがれる月を見る　　　　

杉山　壽子

　好きな器に活ける竜胆　　　　　

　高橋すなを

地芝居の旗のひらめく村はづれ　　　

中西　静子

　水玉の服姉とおそろひ　　　　　

　宮川　尚子

紅赤くひいて待ちゐる昼の客　　　　

八雲　鏡湖

　柱時計がボンボンと鳴る　　　　

　長谷川芳子

締切りの迫る夕刊コラム書く　　　　　　

美保子

　夢で予約す銀河鉄道　　　　　　　　　

　重雄

月照らす大賑はひの鵜飼舟　　　　　　　　

裕子

　夏風邪らしく母の咳込む　　　　　　　

　壽子

ディズニーの土産喜ぶ孫の顔　　　　　　

すなを

　世界に流行る漫画コミック　　　　　　

　静子

花盛りまはる衛星尾を　　　　　　　　　　

尚子

　霞む江ノ島生白子買ふ　　　　　　　　

　幹子

永き日の侍ＪＡＰＡＮ優勝す　　　　　　　

芳子

　戦地訪問極秘外交　　　　　　　　　　

　裕子

おしやもじが話題をさらふ何か変　　　　

美保子

　電車に乗れば触る携帯　　　　　　　　

　重雄

謡初め「鶴亀」ひと節正座する　　　　　　

壽子

　金鯱眩し冬晴れの城　　　　　　　　　

　鏡湖

盃にゆらゆら揺れる眼差しに　　　　　　

すなを

　ちよつといけない悪ふざけなど　　　　

　尚子

プロポーズ指のサイズをさりげなく　　　　

静子

　パズルゲームに暫し熱中　　　　　　　

　幹子

美しき地球よ永遠に月さやか　　　　　　　

重雄

　木の実降り敷く宮の境内　　　　　　　

　裕子

晩学の「源氏」ひもとき秋深む　　　　　　

鏡湖

　夫に感謝の遺族年金　　　　　　　　　

　芳子

庭石を雨が洗ひてさつぱりと　　　　　　　

壽子

　タオルふうはり雲のやうです　　　　

　すなを

爛漫の花に来し方思ひをり　　　　　　　

美保子

　鶯の声真似る口笛　　　　　　　　　　

　尚子

　　令和五年二月二十二日　首

　　五年五月五日　尾
　　於　文音