【徳島県連句協会】歌仙「シネマのチラシ」の巻
歌仙「シネマのチラシ」
捨てられぬシネマのチラシ冬銀河
東條 士郎(冬)
明日の祝ひは孫の袴着
竹内 菊(冬)
厨より小豆煮る香の漂うて
西條 裕子(雑)
鳩時計から鳩の飛び出す
関 真由子(雑)
両の手を差し伸ぶ月に届くまで
三輪 和(月)
葡萄の房の持ち重りせば
執筆(秋)
ウ 猪に食はせるだけの畑仕事
菊(秋)
尽くす積もりの思ひちぐはぐ
士郎(恋)
復讐に走るをんなの妖しさに
真由子(恋)
修羅くぐりたる六道の辻
裕子(雑)
誓ひたる禁酒禁煙守られず
士郎(雑)
サングラスにてそつと旅立つ
都築ひな子(夏)
満月を押し上げケルン堆(うづたか)く
裕子(夏月)
遠く近くにカウベルの音
菊(雑)
読み聞かす絵本に瞳輝かせ
ひな子(雑)
甘いお菓子は右の隠しに
真由子(雑)
単線の停車充分花の駅
菊(花)
土地の訛(なまり)の通ふのどけさ
士郎(春)
ナオ 流鶯に遊行の僧は眼を瞑(つむ)り
真由子(春)
暗闇を刺す一閃の悔い
裕子(雑)
ウィールスと共存ありや人の世に
士郎(雑)
化学反応起こすフラスコ
ひな子(雑)
引き籠もる部屋から自己を解き放ち
裕子(雑)
白きたふさぎ初神楽舞ふ
菊(新年)
よくできたご褒美を添へお年玉
ひな子(新年)
魔法の杖で叶ふ幸福
真由子(雑)
今生のうたかたの恋身を賭けて
菊(恋)
掴んだ命胸に滾(たぎ)れる
士郎(恋)
コロセウム月を仰いで剣闘士
真由子(月)
グレイヘアーの齢(よはひ)冷まじ
裕子(秋)
ナウ 破(やれ)芭蕉門は扉のなきままに
士郎(秋)
待てど暮らせど売れぬ物件
ひな子(雑)
クラシックカメラは亡父(ちち)の使ひつけ
裕子(雑)
ユーチューバーが将来の夢
菊(雑)
花の艶収まりきらぬ画布の枠
ひな子(花)
蒼穹遙か凧の消えゆく
真由子(春)
令和二年十二月 十三日起首
令和二年十二月二十三日満尾
於 渭東コミュニティセンター&文音