【徳島県連句協会】 非懐紙「誰が為の」の巻
非懐紙「誰が為の」の巻
捌 東條士郎
誰が為の憲法記念日雨しきり
東條士郎
透ける合羽で藍植うる母
竹内菊
囀は休むことなく裏山に
三輪和
薄紫を溶かすパレット
士郎
夕月の涼しかりける波止の崎
菊
水羊羹を等分に切る
和
片肌を脱ぐ郵便夫若くして
菊
妻の媚態は見ても見ぬふり
和
地獄まで堕ちたかつてのアダム・イヴ
士郎
カーテンコールやまぬブラヴォー
菊
何台も待機してゐる救急車
和
汚れを知らぬ故里の月
士郎
吾亦紅われも傘寿となりしとや
菊
しみじみ嬉し古酒の味はひ
和
経典の文字に謎解くエゴの鍵
士郎
煙は風に吹かれ四散す
菊
時めきの世を思はする帰り花
和
記憶のなかに凍蝶は死す
執筆
首 令和四年五月三日
尾 令和四年五月十一日
於 交流センター&文音