二十韻「春匂ふ」 の巻

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 短歌同人誌「七曜」200号記念に巻かれた二十韻。
 「七曜」は徳島市出身の歌人柏原千恵子により1968年に創刊。今年通算200号に到達。現代表は紀野恵。

二十韻「春匂ふ」 の巻

 捌 紀野恵

変はりつつ続く言葉や春匂ふ     

春  佐藤真美

 草若返り待てる朝明      

 初春 朝潟よう子

雪解の窓辺に猫は戯れて      

仲春 田丸まひる

 畳屋過る三代目なり       

 雑   紀野恵

虎落笛声は月まで届くらむ     

冬月   永田愛

 サンタクロースに軽くキスする

 仲冬恋   よう子

茜さす君取り分けてくれるピザ    

恋     愛

 古い図面を石で押さへて     

 雑    真美

本棚に失くしたはずの鍵がある    

雑   まひる

 運転免許もはや使はず      

 雑     恵

眠たくて逆さから見る青簾      

夏   よう子

 ソーダ水また少し注ぎ足す    

 夏     愛

廃校の跡に果樹園ひらかれて     

雑   まひる

 繋ぎ合ふ手に椋鳥の来     

 秋恋    真美

いつの日か月であなたとすれ違ふ  

月恋   まひる

 池にさざなみ立てるどんぐり  

 晩秋   よう子

かくれんぼすることももうないだらう 

雑     愛

 バルーンが飛んだ映画みたいに  

 春    真美

燦燦と満つる光や花万朶       

花   よう子

 盃流し飽くることなし     

 晩春     愛