【徳島県連句協会】 箙「イ短調」の巻
箙「イ短調」の巻
秋深し隣家のピアノイ短調
東條 士郎
うすむらさきを帯びて露霜
三輪 和
弓張の月背後より付き来るに
丸関 陽子
ショートカットの髪のためらひ
西條 裕子
宛名なきかすれた文字の文届き
鎌田明日侖
拾ふ枯葉に謎めいた地図
曽根 燦
ばりばりと盛り上がりゆく御神渡り
和
誰の仕組みかまたも出逢ひて
陽子
宿命の恋の予感を持て余す
裕子
取説のなき愛の裏技
士郎
スニーカー爪先立ちて花を盗る
燦
蜂の羽音に合はすハミング
明日侖
乗り捨てし鞦韆なほも揺れ止まず
陽子
世論はいかに防衛費増
裕子
失敗を繰り返す馬鹿愚痴る馬鹿
士郎
辞書一頁汚す蠅打ち
燦
後悔はせぬものと決め月涼し
明日侖
手術を拒む祖父の諦観
和
経を読む日々の習はし尊くも
裕子
清貧といふ生活寂しき
士郎
サイフォンのゴボゴボ独り言を聞き
燦
水滴れる千枚の田に
明日侖
花万朶乗り降り多き船着場
和
大河を跨ぐ初虹の橋
陽子
令和四年十月九日 首
令和四年十月二十八日 尾
於 交流プラザ&文音