【草門会】 歌仙「剃刀尾根」の巻
歌仙「剃刀尾根」の巻
捌 川野蓼艸
鶴渡るくわうくわうとアンダンテ
川野 蓼艸
みなと同じく息白くして
伊澤のりこ
寒椿青磁の壺に活くらむか
岡部 瑞枝
窓の陽溜り猫のうたた寝
西川 菜帆
月明に幻の魚浮かび出で
浅岡 照夫
両眼ぱっちり紅葉かつ散る
大橋 一火
秋惜しみ一切を無にシュレッダー
のりこ
剃刀尾根を共に縦走
一火
向かふ見てゐてね靴下履くあひだ
のりこ
受信送信慌て消去し
瑞枝
スカイツリー平成静かに了りゆく
葛城 真史
立飲み酒場ひそとビル影
照夫
自画像は永遠に反転夏の月
のりこ
崩し文字描き迷ひ蛾よ飛べ
照夫
使ひ捨てコンタクト捨つ炎昼に
真史
義足ランナー風を切り裂き
菜帆
乾漆の阿修羅立像花遅々と
のりこ
野辺に草食む孕み鹿美し
菜帆
曲水の流れに乗りて過去未来
一火
出席葉書手渡しにして
瑞枝
その昔アプレ・ゲールと言はれし事
蓼艸
クリック一瞬厄除け参拝
菜帆
「原罪」と壁の落書き国境に
照夫
歩き続ける平凡な道
一火
樹木葬地中に石と共に棲む
照夫
紅差しなほし指輪嵌めたる
のりこ
黒を着てノラの如くに家を出づ
のりこ
寄り添ふやうに鳴くは邯鄲
一火
川のある街を照らして十三夜
菜帆
ボジョレ・ヌーボーどんと振る舞ひ
菜帆
樹の下に団栗のごと子ら散りて
照夫
エンゼル現れて海の沈黙
執筆
豆大福並び並んで手に入れて
瑞枝
襲名披露獅子に蝶来る
菜帆
一本の大路はさんで花吹雪
蓼艸
蒼天の奥舞へシャボン玉
瑞枝
平成三十年十一月十七日 首尾
於 赤羽会館