子連れ句会　半歌仙「君専用スタンプ」の巻

「子連れ句会」は、その名の通り子連れで参加できる句会だ。
https://note.com/kodurekukai575/
あえて「子連れ」の名を付けている理由が、子を連れていない私にもわかった。当日はzoomで行ったのだが、句を付けているあいだ沈黙は少なく、流れてきたのはこんな音声だ。「ちょっとちょっと！なにしてるの」「すみません抜けてきます」「様子見に行ってきていいですか」パパ、ママ、がんばって……そして句を付けてって……。そんな感じでできあがったのが今回の一巻である。

変声期いつせいに来て夏の雲　　　　かおり
　道端に蟻流れゆくなり　　　　　　てふこ

発句の出発地点は「変成期」という人間の存在である。天高く抜けていく視線が、脇で足元にグーっと落ちてくる。このカメラワークが見事で、「うわーっ俳人キタ！」とはしゃいだことを覚えている。

タイトルにもなった、印象的な恋句はこちらである。

色鳥と同じ柔らかさを謳ふ　　　　　火尖
　君専用スタンプを買う（使えない）みやさと
路線図を辿る手と手の触れぬ距離　　小百合

この、プラトニックな、恋。おそるおそる近づいて、ゆっくり慎重に触れようとする距離。使えない「君専用スタンプ」がどんなものか、なんとなく想像がついてしまうのは私が現代人だからだろうか。

今作品をTwitterで公開した際に、反応が多かったのは次の句だ。

神様の不在通知のごと嵐　　　　　　みやさと
　一升瓶で殴つてしまふ　　　　　　てふこ
六七と数へて花の鈴鳴らし　　　　　霞

嵐のような「神様の不在通知」のあと、そんなに「不在」が気にかかったのか、「一升瓶で」！「殴つてしまふ」！ここまで静かに組み立ててきた流れをぶち壊す「一升瓶で殴つてしまふ」。とんでもないの来たな……と思ったし、読者のみなさんも思ったようだった。

俳人と連句会をご一緒するのはすごく楽しい。捌きの私が、どれだけスパルタなことを言っても食いついてきてくださる。パソコンの画面の向こう側で、あちこちの引き出しを開けている音が聞こえる。あー、そっちじゃなくてこっちです。もうちょっと奥の方に何かあるはずです。捌きながら、捌いたあとも、俳句の引き出しの隣に連句の引き出しを置いてくださるといいなと願う。

半歌仙「君専用スタンプ」の巻 

　　　捌・高松霞

変声期いつせいに来て夏の雲　　　　　　

かおり

　道端に蟻流れゆくなり　　　　　　　

　てふこ

Uの字を強く押したるキーボード　　　　　

裕美

　紅茶は暗き地下室の味　　　　　　　　

　裕美

紙の月目と鼻口を書き足して　　　　　

みやさと

　コスモス揺れる野に放ちたる　　　　

　小百合

色鳥と同じ柔らかさを謳ふ　　　　　　　　

火尖

　君専用スタンプを買う（使えない）

　みやさと

路線図を辿る手と手の触れぬ距離　　　　

小百合

　名産少なき街に別れて　　　　　　　

　てふこ

胃薬の缶の錆から眠くなる　　　　　　　　

裕美

　ラジオ見知らぬ魚の話　　　　　　　　

　火尖

凩の越え空つぽの競馬場　　　　　　　　

小百合

　冬の月より黒子生まるる　　　　　　

　かおり

神様の不在通知のごと嵐　　　　　　　

みやさと

　一升瓶で殴つてしまふ　　　　　　　

　てふこ

六七と数へて花の鈴鳴らし　　　　　　　　　

霞

　じやんけんぽんで雛あられ食む　　　　

　裕美

　2021年8月1日　子連れ句会　～連句篇～