【猫蓑会】 歌仙「文字摺草」の巻

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歌仙「文字摺草」の巻

   衆議判

文字摺草僧都の旅の記を思ふ    

鈴木千惠子

 空耳ならむ細き麦笛      

 鈴木 了斎

PTA次の行事を確かめて     

武井 雅子

 スカート丈はこれがはやりと   

 林 転石

埋立の埠頭公園月高し       

平林 香織

 左を示す標識に露       

 佐々木有子

馬市へ育てた馬を牽きながら        

 手綱のごとく心染め分け        

 千

好き嫌ひ花占ひはよく当たり        

 昔マドンナ今もマドンナ        

 雅

軽トラに乗りテキサスの風の中       

 あちらこちらに恐竜の骨        

 織

人間が食物連鎖頂点に           

 春三日月のやうに痩せたい       

 斎

鮮やかなバリカン捌き剪毛期        

 弥生山越え薬売り来る         

 織

花の縁お茶にすあまを添へて出し      

 カレンダーには大き赤丸        

 有

素振りする竹刀に気合籠もるらん      

 共鳴しあふ双子少年          

 千

ダウは下げ日経平均さらに下げ       

 自由の女神遠き眼差し         

 雅

空白のひととせ君はどこに居た       

 ジグソーパズルやつと完成       

 織

使ひ道解らないネヂ落ちてをり       

 焼藷屋また技術革新          

 斎

被布を脱ぎ早変りする女形         

 六区あたりを肩そびやかし       

 石

月の下五百羅漢の誰に似て         

 秋の遍路に拾ひたる恋         

 有

手つないで南へ帰る燕めく         

 諦められぬ夢をまだ持ち        

 千

羊羹の端をかじればなほ甘い        

 世代を越えて歌ふふるさと       

 雅

大広間天井までも届く花          

 風やはらかに深呼吸する        

 織

  令和三年五月五日 首
  六月九日 尾
  於 文音