【草門会】歌仙「オッテンタカショ」の巻
歌仙「オッテンタカショ」
捌・岡部瑞枝
新しき線路設けて神の旅
朝倉 一湖
轟と音する今小六月
川野 蓼艸
舌を灼く酒を干すならひと息に
山地春眠子
そーつと閉ぢる祖父の抽斗
村松 定史
玉蟾を内懐に飼ひならし
一湖
雁来紅にさはさはと風
春眠子
ウ テレビロケべつたら市をインタビュー
一湖
電信柱に役者の首絵
蓼艸
点滴を取り替へに来る時を待つ
定史
戛戛戛と戛戛戛と
蓼艸
思ひ川羽化を重ねるふたりして
一湖
西の方から狐の嫁入
春眠子
雪やんで月は真円通夜の席
蓼艸
台湾スウィーツまたも開店
岡部 瑞枝
道の辺のふとした石に躓いた
定史
遂に越されしフェルマーの壁
春眠子
伝令の背の袰を追ふ花嵐
定史
灰撒ける土とみに匂へる
今 朝
ナオ 啄木忌なにと戯れたれと泣く
定史
沖ゆく船に呼びかけてみ
西川 菜帆
自動ドアしまる最後に逡巡す
一湖
訴訟長引く斜角観望
定史
信濃ではオッテンタカショと杜鵑
蓼艸
毒は薬にジギタリス咲く
菜帆
白粉婆文車妖妃濡女
(おしろいばばふぐるまやうひぬれをんな) 春眠子
母系三代美人揃ひで
定史
ぼく取るよ育児休暇をぜつたいに
執筆
キスが大変宇宙遊泳
一湖
補陀落山(ふだらくせん)ひたすら月に導かれ
今朝
さあ衣被湯気のあるうち
一湖
ナウ 関係者以外立ち入り禁止崩れ簗
春眠子
革命準備半地下に棲み
菜帆
ゆるキャラの着ぐるみを着て客引きは
今朝
心のままに透ける春昼
定史
花万朶高麗茶碗底深く
瑞枝
猫の尾ゆれる逃げ水の果て
今朝
(二〇一九年十一月十六日起首/二〇二〇年一月十八日満尾 於・滝野川会館)