【奈良県連句協会】 二十韻「ミモザ」の巻

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二十韻「ミモザ」の巻

   捌 木戸ミサ

殉教の丘を煙らすミモザかな    

谷澤  節

 踏絵の板に十字架の像     

 木戸 ミサ

ふかぶかと雪解の風を吸い込みて  

松本奈里子

 おしゃぶり落とすうたた寝の嬰 

 もりともこ

月光に銀の粉散らす雲母虫         

 うなじにふわり君の香水       

 ミサ

雑踏にまぎれて好きとささやかん    

奈里子

 通勤客で流行る食堂        

 ともこ

がくがくと顎関節が軋みだし        

 祖父の入れ歯はドイツ製とか     

 ミサ

研ぎ終えて河豚の皮にて試し切り    

奈里子

 広報官のぼかす核心        

 ともこ

高級なワイン求めて旅をして        

 濃厚キッス船のデッキで       

 ミサ

潮騒に恋の名残を月と聴き       

奈里子

 長き夜に読む三島文学       

 ともこ

敬老の日の祝典は欠席だ          

 網代格子の反物の粋         

 ミサ

静やかに歩く玉砂利花の庭       

奈里子

 春はおぼろに夢もおぼろに     

 ともこ

  首 令和三年二月十一日
  尾 令和三年三月七日
  於 文音