【宮城県連句協会】 歌仙「憂国」の巻
歌仙「憂国」の巻
捌 狩野康子
憂国の赤い眼をした春告魚買う
狩野康子
廊下の奥は今めかり時
長渕丹
タンポポとテニスボールの戯れて
部谷虎落
自転車のカギ探す少年
佐藤千枝子
遅番の旋盤工に明けの月
丹
急ぐ人影馬の市へと
康子
秋の実を集めて描く父の顔
虎落
石畳から続く城塞
丹
スマホから警報音のいっせいに
千枝子
余命知りつつ我が妻とせん
虎落
思い出はひとつ枕にやわらかく
康子
見守り地蔵撫でる幼児
千枝子
つっかかり機嫌損ねるラムネ玉
丹
お化け屋敷の好きな桂男
康子
ひとの世は見えない段差多すぎる
虎落
名物団子ならぶ半時
千枝子
仇討の高田の馬場は飛花落下
丹
門限ですよ鳴く牛蛙
虎落
単線の旅の車窓に畔青む
千枝子
引いてしまった婆抜きの婆
康子
久しぶり名の浮かばずにじゃまたね
虎落
深く静かに変異株らし
丹
新雪のカイバル峠に足止めす
康子
銃担いつつ冬林檎噛む
千枝子
めくるめく輪舞のかの日夢の中
丹
どこかいじらし恋に不器用
虎落
剃髪に男の影もばっさりと
千枝子
曰くありげな森の隠沼
康子
たおやかに猫満月を跳び越せる
虎落
勝相撲らし歩み大股
丹
新走抱えてきたる丁稚どん
康子
四分休止符をつけてあげたい
千枝子
標識の通り進めど突き当り
丹
紋白蝶の長閑なる舞
虎落
舟下り花千本を従えて
千枝子
東風に向えばかえる童心
執筆
首 令和三年四月十五日
尾 令和三年九月十六日
於 宮城県聴覚障碍者センター研修室