【草門会】 短歌行「凹面鏡に入る」の巻

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短歌行「凹面鏡に入る」の巻

   捌 村松定史

湿風や都会は凹面鏡に入る    

村松 定史

 重力こもる遠き初蟬     

 小池  舞

人差指たてれば猫の嗅ぎに来て  

伊澤のりこ

 空缶ばかりテーブルの上   

 岡部 瑞枝

理科室の壁に月齢表吊られ    

西川 菜帆

 照葉の並木雨に鎮まる    

 浅岡 照夫

枝豆のさらりこの世に飛び出しぬ     

 瞳はみつめ耳はそばだて     

 のりこ

ある朝に地球のパリで永遠の瞬間    

菜帆

 不適切なるパンと葡萄酒       

 舞

花に風旅の出端をくじかるる     

のりこ

 駅舎の裏の蛙合戦         

 照夫

開帳の輪袈裟の下に握りしは       

 闇の貨幣は市場を巡る       

 照夫

女王陛下逝きて無敵のアイドルに    

菜帆

 大海原にひとり漂ひ        

 瑞枝

をとつひの恋の小骨の未だ取れぬ     

 嘘つくために拭ふ口紅      

 のりこ

山頂へつづく氷壁月皓と        

菜帆

 ふくろうは啼く鎧戸は閉づ    

 のりこ

蝋石の因数分解消えかけて       

照夫

 眠り人形手には包帯        

 瑞枝

グレゴリオ聖歌流れる花の庭      

定史

 序破急なし鞦韆をこぐ       

 菜帆

  令和四年七月十六日 首

  九月十七日 尾
  於 東京文化会館