【徳島県連句協会】 短歌行「臨月の」の巻

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短歌行「臨月の」

   臨月の孫と語らふ良夜かな  

   竹内 菊(月)

    二百十日の過ぐる吉日 

    東條 士郎(秋)

   森へ入る雑木紅葉の散り初めて   

   菊(秋)

    命あるもの潜む閑寂さ    

    士郎(雑)

 ウ 耳飾り一つ一つの愛ほしさ     

   菊(雑)

    邂逅を待つティファニーの角 

    士郎(恋) 

   ガードマン妙に優しく慣れ慣れし  

   菊(恋)

    何故かわたしは他人に好かれる

    士郎(雑)

   床下に狸棲みつく受難劇      

   菊(冬)

    越後旅すりや鎌鼬怖     

    士郎(冬)

   裏路地を探りて名花尋ねんと    

   菊(花)

    和泉式部忌短冊を買ふ    

    士郎(春)

ナオ ことばにはならぬ豊かさ春の水  

   士郎(春)

    歴史を語る主菓子の銘     

    菊(雑)

   四重奏ひさかたなれどうまく合ひ 

   士郎(雑)

    灯心蜻蛉付きて離れず     

    菊(夏)

   屈託を持ちつつ月の青野ゆく   

   士郎(夏月)

    万年筆の文を懐        

    菊(恋)

   別るるとなれば恋しさいや増しに 

   士郎(恋)

    酒を欲しがる己御し兼ね    

    菊(雑)

ナウ 阿修羅にも眉間に皺を寄せる謎  

   士郎(雑)

    掌に載せたれば融ける淡雪   

    菊(春)

   花冷の卓に臂突くカフェテラス  

   士郎(花)

    紫雲英のテイアラ児らに頂く  

    菊(春)

  令和三年九月二十六日起首

  令和三年十月 十六日満尾

  於 県立文学書道館&文音