テスト

クリックで拡大▲

歌仙「憂国」の巻

   捌 狩野康子

憂国の赤い眼をした春告魚買う  

狩野康子

 廊下の奥は今めかり時     

 長渕丹

タンポポとテニスボールの戯れて 

部谷虎落

 自転車のカギ探す少年   

 佐藤千枝子

遅番の旋盤工に明けの月        

 急ぐ人影馬の市へと       

 康子

秋の実を集めて描く父の顔      

虎落

 石畳から続く城塞         

 丹

スマホから警報音のいっせいに   

千枝子

 余命知りつつ我が妻とせん    

 虎落

思い出はひとつ枕にやわらかく    

康子

 見守り地蔵撫でる幼児     

 千枝子

つっかかり機嫌損ねるラムネ玉     

 お化け屋敷の好きな桂男     

 康子

ひとの世は見えない段差多すぎる   

虎落

 名物団子ならぶ半時      

 千枝子

仇討の高田の馬場は飛花落下      

 門限ですよ鳴く牛蛙       

 虎落

単線の旅の車窓に畔青む      

千枝子

 引いてしまった婆抜きの婆    

 康子

久しぶり名の浮かばずにじゃまたね  

虎落

 深く静かに変異株らし       

 丹

新雪のカイバル峠に足止めす     

康子

 銃担いつつ冬林檎噛む     

 千枝子

めくるめく輪舞のかの日夢の中     

 どこかいじらし恋に不器用    

 虎落

剃髪に男の影もばっさりと     

千枝子

 曰くありげな森の隠沼      

 康子

たおやかに猫満月を跳び越せる    

虎落

 勝相撲らし歩み大股        

 丹

新走抱えてきたる丁稚どん      

康子

 四分休止符をつけてあげたい  

 千枝子

標識の通り進めど突き当り       

 紋白蝶の長閑なる舞       

 虎落

舟下り花千本を従えて       

千枝子

 東風に向えばかえる童心     

 執筆

  首 令和三年四月十五日

  尾 令和三年九月十六日

  於 宮城県聴覚障碍者センター研修室