【草門会】 二十韻「前途洋洋」の巻
二十韻「前途洋洋」の巻
捌 村松 定史
前途洋洋と子猫に言うてやる
山地春眠子
さうかさうかと田に亀の鳴く
小池 舞
春潮を越えて舟ゆく帆を立てて
西川 菜帆
膝かかへれば卵の形
伊澤のりこ
漱石の脳残されて月暑し
岡部 瑞枝
夕顔棚に酌み交す杯
川野 蓼艸
共通の趣味は妖怪山登り
瑞枝
「気が変つたわ」と口紅で書く
蓼艸
地震やみて柱時計の動きだす
村松 定史
株は売るべし金は買ふべし
春眠子
荒野凍つ我等叫びを武器として
のりこ
遮断機キンコンカンと鳴り 雪
蓼艸
寿福寺を過ぎて指定の家間近
瑞枝
二人して見る受胎告知図
菜帆
須佐之男が行く月光を踏みしだき
春眠子
砂糖大根ぐいと引き抜く
舞
病窓を訪ねて来しは秋の蝶
舞
ポケットの種芽吹く向日葵
葛城 真史
千年の老樹不易の花の満つ
定史
霞敷きをる逆光のなか
菜帆
□旧かな遣い
首尾 令和四年四月十六日
於 東京文化会館