【草門会】 短詩行「翔んでゆくのは 鳥ですか問いですか?」の巻

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『翔んでゆくのは・・』留書
定型の毒も依存症である?  上野 遊馬

遠路大阪から、川柳人である小池氏が「短詩行」に挑戦しに見えた。さっそく素晴らしい第一句(発句とは呼ばない)を披露して、捌きを喜ばしてくれました。小池氏のように男性は少数ながら、この新しい形式に関心を持ってくれるのだが、どういうわけか女性陣はまったく・・
 この一作、捌きの目配りが足りなかったせいか、「~が~している」「~は~だ」という言い回しが目立つ。無意識に俳句や短歌の「上の句・下の句」の作り方が身に染みこんでいて、それを無理?に自由律ふうに散文化して、短詩に仕立て上げたような(笑)。
 かくの如く「定型の毒(失礼)」は、我々の骨の髄にまで及んでいるようです。商品のCMに使われるキャッチ・コピーでも、「五七調だとインパクトがあって、消費者に強くアピールできる」と、コピーライターが言っておりました。逆に女性向け商品のCMでは、意図的に五七調を避けて口語散文調のコピーにするとのこと。
 この日は秋の彼岸の中日でした。特にそれを意識したわけでもないのでしょうが、なぜか①②③の続きにどこか生死についての存問(臨済の考案を思わす)があるような・・。禅画では丸を描いて円相とし、全き宇宙と一体化した悟りを表現するのだが、まあその形而上的やりとりを、龍さんは「蒟蒻は豆腐より偉い」などと、落語の『蒟蒻問答』で混ぜっ返してしまう。連句フリークとは、こういう丁々発止を「無上の喜び」とする奇態な人たちなのです。

短詩行「翔んでゆくのは 鳥ですか問いですか?」

   捌・上野 遊馬

① 翔んでゆくのは 鳥ですか問いですか?        

小池 正博

② 海面に出た腕はすでに死んでいる           

四ッ谷 龍

③ 丸を描けば月なのだから呑んでしまえ         

山地春眠子

④ 蒟蒻は豆腐よりえらいのだ                  

⑤ マンモスが「Hey  Siri ,一句よんでよ」と 声をかける 

高松  霞
 

⑥ 火星人は G線上で缶蹴りをして疲れてしまった    

西川 菜帆

⑦ 後ろから撃たれたって 友情は壊れたりはしない       

正博

⑧ 雪の燃える一片が ダモクレスの剣の糸を切る        

 菜帆

⑨ 戦記の終わりに柊の花のことを・・              

⑩ 猫は寝て待つ                        


 

⑪ 神様の血圧を測ったら・・低すぎ               

⑫ 等比級数的にお菓子が降ってくる              

正博

⑬ 日々是好日かもしれない                  

菜帆

⑭ 酒焼けした海賊が握る望遠鏡がすいすい伸びて  桜!   

春眠子

⑮ 一角獣捕獲装置完成                     


 

⑯ ワチキニハ カカワリナイコトデゴザンス         

春眠子

⑰ 主語を他人にして出してみる艶書               

⑱ 午後四時に男は髭を剃って嘘をつく            

春眠子

⑲ 国際空港では群衆に偽警官が紛れ込んだ           

正博

⑳ 西寄りの風が 砂曼荼羅を掻き消してゆく          

菜帆

  (令和元年九月二十一日首尾 於・滝野川会館)